ペットをめぐる法律事情 【後編】(この記事は2004年に書かれました)
今日は、前回の予告どおり、イギリスのペット事情について紹介しよう。イギリスはペット保護の先進国で、ペットに関する法律もさまざまな面で整備されている。
まず、民事責任について見てみると、通常、無断で他人の所有地に侵入すると不法侵入として扱われるが、ペットによる侵入に対しては、特別の規則がある。例えば、ネコが不法侵入した場合でも、ネコの所有者は不法侵入の責任を負わないし、さらにネコが損害を引き起こしても責任を負うことがない。また、犬の場合でも、所有者が故意の場合以外は責任を負わない。いずれも、イヌとネコの習性を考慮した結果である。その一方、家畜の場合は、所有者は責任を負わなければならないとされている。
日本と異なり特徴的なのは、イギリスにはペットの福祉に関する法律が整備されているということだ。その中心は、動物虐待を禁止する動物保護法である。日本にも動物虐待を禁止する動物愛護管理法が最近制定されたが、この法律が制定されたのは1911年であり、イギリスのペット保護の歴史を感じさせる。そのほか、1960年には、動物を不要な苦痛にさらすような状態で遺棄することを禁止する動物遺棄法も制定されている。
さらに、1988年に改正された動物保護法は、動物に虐待を加えた飼い主からその所有権を一定期間剥奪する権限を裁判所に与えた。最近、日本では児童虐待をめぐり親の子供に対する権利の議論が盛んだが、イギリスではすでにペットに関しても、不届きな権利者の権利を制限する法律が存在しているのだ。また、動物健康法は、イギリス国内における動物の運搬または輸出入における輸送中の動物の福祉について規定する。
このように、イギリスは、さまざまな側面からペットの保護を進めており、比較法的に見ても日本と異なる点が多く興味深い。ペットに対する扱いは、その国の文化と密接に関係しているため、イギリスの法律をすぐ日本にあてはめて考えることは、不合理な部分があるが、今後のペット行政の参考になる点は多々存在すると思います。(無断転載・盗用厳禁)
TOPへもどる
ペットをめぐる法律事情 【前編】(この記事は2004年に書かれました)
今回はペットビジネスも含めたペットをめぐる法律に関する話をしよう。昨今のペットブームの是非はともかく、今では様々なペットがちまたにあふれるようになった。ペットは法律上は「物」として扱われるので、たとえば、ペットの購入には、通常の売買と同様のルールが適用される。したがって、ペットの購入でトラブった場合の処理も、売買トラブルに準じた処理がなされる。
私の経験上、ペットトラブルの多くは、ペットの購入に関することが非常に多い。そこで、ペットを購入する際は、ペットショップと意思疎通を図り、できるだけ売買契約書を取り交わした方がよい。特に、動物が疾患を持っていた場合にトラブルの多くが発生するから、この点の責任あり方を具体的に取り決めておかないと、あとあと面倒なことになるわけだ。
ところで、ペットに関する法律である「動物愛護管理法」は環境省が管轄している。この法律は、旧動物保護管理法を平成12年に改正してできた法律で、特徴としては、飼い主の責任の強化、動物取扱業者に対する届出制の導入、動物愛護推進員と協議会の組織化、動物虐待に対する罰則強化、などをあげることができる。
動物取扱業の対象とは、要するにペットショップである。実は法改正以前は、ペットショップに対する規制はほとんどなく届出義務のある自治体も10前後だった。ところが、この法律を受けて独自にペットショップを規制する自治体も多くなった。たとえば、大阪府と大阪市では、条例でペットショップに動物取扱主任者を置くことを義務づけている。ちなみに私も大阪府動物取扱主任者である。
このように近年、日本でもペットを取り巻く法環境は大きく変化し始めているが、次回はペット先進国であるイギリスのペット事情について紹介してみよう。(無断転載・盗用厳禁)
TOPへもどる
アイヌ文化を世界遺産へ
【後編】(この記事は2004年に書かれました)
さらに、第一の理由について、アイヌ文化の世界性及び大多数のアイヌ人が日本に居住している点を考えれば、アイヌ文化の存する国として日本が世界に負う保護責任は重大であることを指摘したい。(無断転載・盗用厳禁)
TOPへもどる
アイヌ文化を世界遺産へ 【後編】(この記事は2004年に書かれました)
アイヌ文化を世界遺産へ 【前編】(この記事は2004年に書かれました)
ユネスコの第28回世界遺産委員会が6月28日から7月7日まで中国の蘇州で開催された。今回の会議では、「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産への登録が決定している。これで日本の世界遺産としては12件目だ。
世界遺産は、国を越えて世界的に保存する必要があり、過去から将来の世代に伝える価値のある自然遺産または文化遺産を保護することを目的とする世界遺産条約の制度である。世界遺産へ登録するためには、条約加盟国が、世界遺産として登録を希望する国内の遺産を、世界遺産暫定リストに記して世界遺産委員会へ推薦しなければならない。
ところで、日本国内で今後推薦すべき文化遺産を考えた場合、私は暫定リストにアイヌ文化の遺産を加えることを検討するべきだと考える。理由は次のとおりだ。
第一の理由は、アイヌ文化は日本のみならず、国境を越えてサハリンや千島列島などの北方アジアに及ぶ文化であり、その文化遺産は世界遺産とするにふさわしい世界性を有しているからである。第二の理由は、1997年に制定されたアイヌ文化振興法は、アイヌ文化の振興及び国民に対するアイヌの伝統等に関する知識の普及と啓発を目的にしているが、アイヌ文化を世界遺産として推薦することは、これらの目的に貢献できると考えるからだ。(つづく)
(無断転載・盗用厳禁)
TOPへもどる
湿地と文化 【後編】(この記事は2004年に書かれました)
今回は湿地の話の続きで、湿地を保全する国際条約の話をしよう。湿地は、生態系の中で思いのほか多様な役割を担っているが、特に国際的に重視されたのは、渡り鳥の中継地点としての役割であった。
というのも、渡り鳥は、一気に休みなく目的地へ渡っていくのではなく、その途中にある池や湖などの湿地で適宜一休みしながら、目的地に飛来する。なので、その途中にある湿地がなくなると、渡り鳥は休憩することができず目的地に渡れなくなってしまう。そこで、これを国際的に保全する必要性が唱えられたわけである。
具体的には、1971年に国際的に湿地を保全する条約が成立した。それは「ラムサ―ル条約」と通称されている条約である。イランのラムサ―ルという町で採択されたので、こう呼ばれている。この条約に加盟すると、その国は国内の湿地を保全しなければならない。日本もこれに加盟しており、しかも1993
年には釧路で国際会議が開かれている。
条約に加盟すると、国内の代表的な湿地を条約事務局に届け出なければならない。これを「登録湿地」という。日本には現在13ヶ所の登録湿地がある。これらに加えて、環境省は先ごろ、ラムサール条約の登録湿地の候補地をまとめた。その数は計54カ所に及び、さらに絞り込んで2005年11月にウガンダで開催される第9回締約国会議で登録を申請するそうだ。国内においてもラムサール条約は、今後ますます環境保全における役割を拡大してゆくことでしょう。
(無断転載・盗用厳禁)
TOPへもどる
湿地と文化 【前編】(この記事は2004年に書かれました)
今回のテーマは「湿地と文化」である。湿地(wetland)と一言でいってもいろいろあるが、日本で一番身近な湿地は、やはり水田だろう。そのほか沼や湖も湿地だし、埋め立て問題で話題になる干潟なんかも湿地にあたる。また、北海道には日本最大の湿地、釧路湿原があることは、みなさんよくご存知でしょう。
湿地という土地柄は、古来より人間にとってあまり好ましいものとは考えられていなかった。湿気の多いジメジメした土地は、水はけが悪いし病原体が多く存在しているし、また見た目も何となくおどろおどろしいところがあって、どちらかいうと使い勝手の悪い忌み嫌われる土地だったのだ。今でも人間の居住地は水はけのよい高台に作られることからしてもそうだ。
ところが、科学の進歩と共に、実は湿地は見た目と異なり多様な機能をもち、動物のみならず人間の生活にも大変に有益なものであることがわかってきた。こうした事実は国際的にも認められており、湿地を保護する条約も存在している。また、日本の環境省も最近では国内の重要な湿地を500ヶ所選定して発表するなどしてその価値を認めている。そこで、次回は、この国際条約を中心に紹介しよう。(無断転載・盗用厳禁)
TOPへもどる |