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里山法務教室

環境アセスメント・後
このページでは、里山や環境問題に関する法律の話題について不定期にご紹介しています。

環境アセスメントの新展開 【後編】(この記事は2004年に書かれました)

現行の環境アセスメントは、いわゆる事業アセスメントと言って、事業計画が確定した段階で実施されるため、その評価の対象や範囲が制限されるという弱点がある。そこで、これらの弊害をなくすため、事業が確定する以前の政策検討の段階でアセスメントを実施することが主張されている。これを、戦略的環境アセスメント(Strategic Environmental Assessment)という。

SEAと呼ばれるのは、事業に先立つ上位計画や政策等のいわば戦略的な意思決定の段階で、アセスメント行うためである。日本では、中央環境審議会が、答申「今後の環境影響評価制度の在り方について」の中で、今後SEAの具体的な検討を進めるべきとしている。また、環境アセスメント法の制定の際、国会の付帯決議の中でもSEAの制度化に向けた検討の必要性が指摘された。地方公共団体では、東京や三重などの一部の地方公共団体がSEAを考慮する政策を採用している。

では、具体的にSEAとはどのようなものなのであろうか。SEAは新しい概念であるため、確定的な定義はないが、共通する要素として、1.その対象が事業 (project)ではなく、政策(policy)、計画(plan)、プログラム(program)の3つのPを対象とすること、2.環境面からの評価を記載した文書を作成し、必要に応じて環境部局や公衆との協議を行う等、評価のための体系的な手続を定めたものであること、の2点をあげることができる。

環境省では、すでに「戦略的環境アセスメント総合研究会」を設置し、報告書も作成され、現在もSEAの検討を進めている。とかく「環境アワセルメント」だと批判される現行の環境アセスメントと比べて、SEAはその対象・関係者とも拡大するわけであり、これらステークホルダー間の利害をどれだけ適正に調製することができるかが、今後の課題となりそうです。(無断転載・盗用厳禁)

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土壌汚染は防止できるか 【後編】(この記事は2004年に書かれました)

これまでの議論を踏まえて、土壌汚染対策法の課題をあげると、以下の点を指摘することができるだろう。

まず、同法の目的は、あくまで既存の土壌汚染の事後的解決を図るものであり、汚染の事前予防に関する規定を設けていない。しかし、環境保全の基本は事前予防であることを考えると、今後は同法に土壌汚染の事前予防に向けた何らかの規定を設けることを検討した方がよい。

また、調査契機を、有害物質を使用した特定施設を廃止する場合と、土壌汚染の恐れと健康被害の恐れがある場合に限定していることも問題である。前者については、操業中の工場に起因する土壌汚染は対象外となってしまう。また、工場が操業の実体がないにもかかわらず廃止されないままだと、汚染の恐れのある土地がそのまま存続する可能性がでてくる。一方、後者については、生活環境に対する被害を見逃す結果になり、対象となる被害の範囲が狭すぎるきらいがある。

いずれにせよ、土壌汚染対策法は実際の土地取引ビジネスと密接に関係しながら、今後はその内容の変化を余儀なくされるだろう。特に不動産に関する法律との調整が求められてくると思います。(無断転載・盗用厳禁)

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土壌汚染は防止できるか 【中編】(この記事は2004年に書かれました)

日本における土壌汚染の歴史は古い。明治時代の足尾鉱毒事件も土壌汚染の公害だし、4大公害病の一つであるイタイイタイ病もカドミウムによる土壌汚染が原因であった。こうした土壌汚染に対しては、たとえば、1970年に農用地土壌汚染防止法が制定され、地下水汚染に対しては、1989年及び1996年に水質汚濁防止法が改正され対策が図られている。

それに対して、土壌汚染一般に関しては先の農用地を除いて、これを防止する法律は制定されていなかった。しかし、90年代後半になって、ダイオキシン汚染を始めとする土壌汚染に対する国内の関心が高まるのに伴い、1999年にはダイオキシン類対策特別措置法が制定され、2002年には土壌汚染対策法が制定された。

土壌汚染対策法によると、有害物質を使用した特定施設を廃止したり、土壌汚染の恐れと健康被害の恐れがある場合に調査命令が出される。この場合、調査義務者は、対象となる土壌について指定機関に土壌汚染を調査させて、調査結果を都道府県に報告しなければならない。そして、土壌汚染があるという報告を受けた都道府県は、当該地域を指定区域に指定しこれを公示し、台帳に記載する。指定区域の指定を受けた場合は、必要に応じて汚染対策命令が出されるとともに、土地の形質変更が規制されるのである。

ここで、土壌汚染対策法の特徴を幾つかあげてみよう。まず、同法は土壌汚染の責任を汚染原因者に課すのみならず、土地所有者にも調査・措置義務を課している。従って、汚染を知らずに土地を購入した場合でも、購入者は汚染について責任を負わなければならない。

また、汚染については過去に生じた汚染も規制の対象となる。すなわち、土壌汚染対策法の制定以前に生じた汚染も規制対象となるため、例えば、汚染原因者から相続によって財産を受け継いだ場合は、相続人がその責任を負うのである。さらに汚染地であることは指定区域台帳に記載されて一般に公開されることから、これを嫌う責任者により土壌浄化が促される効果も期待できる。

一方、同法の規制対象となるためには、有害物質を使用した特定施設を廃止したり、土壌汚染の恐れと健康被害の恐れがある場合、いわゆる調査契機に該当する場合でなければならない。よって、現に土壌汚染が存在する場合であっても、調査契機にあたらない場合は、同法も規制対象とならない場合が生じるのである。

さらに、法の目的を国民の健康保護に限定したことにより、土壌汚染の人以外の生物への影響は考慮されることはないし、生活環境への影響も問題とされないのである。このように、保護法益を健康被害に限定することは、土壌汚染原因の根本的な除去を実現しない可能性があり、問題があると言える。(無断転載・盗用厳禁)

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土壌汚染は防止できるか 【前編】(この記事は2004年に書かれました)

宝塚の東方、大阪府北部に位置する能勢町は能勢妙見山の麓に広がる自然豊かな町だ。能勢妙見山は、私も高校生の頃、よく合宿や登山に訪ねた馴じみのある山である。その能勢町のごみ焼却場から1998年に高濃度のダイオキシンが発見された。この問題はその後、ダイオキシン労災訴訟へと拡大することになる。

いわゆる土壌汚染とは、重金属や揮発性有機化合物などの有害物質が地下に浸透し、その物質や地質の水理特性に従って、有害物質が徐々に拡散することが原因で発生する。特にトリクロロエチレンなどの有機塩素系化合物は、水よりも重く粘性が低いため、地中深く浸透することにより、地下水までも汚染する恐れが高い。

土壌汚染は、大気汚染や水質汚濁などの他の公害とは異なる特徴をもつ。すなわち、土壌汚染は目に見えないので早期発見が極めて困難なのである。もしかすると、皆さんが住んでいる場所もすでに汚染されているかもしれない。しかし、日常生活でその事実を明確に知覚することは、はなはだ難しい。

さらに、土壌汚染は自然浄化がほとんど望めないのである。土壌は大気や河川のように流動性がないため、その汚染を改善するためには、人的に土壌を除去するしか方法がない。従って、その対策は人的措置が極めて重要であり、それがなされない限り、長期に渡り土壌汚染の状態が継続し、被害が拡大する恐れがあるのだ。

また、これと関係して、汚染されている土地は私有地が多いため、土壌汚染対策は私有地に対する法的規制を図らなければならないが、これは私権と公共の福祉の調整をいかにはかるかという、すぐれて憲法的な問題へと発展する可能性もある。

ところで、土壌汚染の現状はどうなっているのだろうか。環境省による自治体アンケートによれば、平成12年度までに報告された土壌汚染の事例は 574件にのぼる。しかし、これらの汚染報告は義務ではないから、報告事例は氷山の一角と考えることも可能である。よって、日本の土壌汚染の現状は極めて深刻だと捉えることからスタートしなければならないだろう。(つづく) (無断転載・盗用厳禁)

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